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ホスピス・ボランティア体験談

by  坂口まりさん(仮名)

2002年7月5日

ホスピスのボランティアについて

半年前に、ホスピス・ボランティアの教育プログラムを受けて、その後、他のボランティアメンバーとともにトレーニングを受け、現在ボランティアメンバーとして週に1回ホスピスに行ってます。ボランティアなので、患者さんの病名や詳細は申し送りされませんが、患者さんの大まかな情報や、特に精神面での状況を中心に情報収集していきます。申し送りは、朝一番のボランティアメンバーがRNによって情報を受け、その後は時間ごとにボランティアメンバー同士で申し送りをしていきます。

以前は、患者さんの入浴介助やほとんどの食事介助もボランティアメンバーが担っていたそうですが、現在は、食事介助が時々必要とされる以外は、患者さんのお茶の準備や、あと話相手になるのが主な役割になっています。

私が、今までのこのボランティアを通しての学びは多々ありますが、なんといっても、人との出会いが自分にとっての喜びです。ボランティアなので、他のメンバーもみな心にゆとりを持ってこられるので、私のこともよく面倒をみてくださいますし、人生経験も長い方が多いので、ボランティアの時間を通して、彼女や彼らから学ぶことが本当に多いです。特に、患者さんとの会話や接し方は、感情の汲み取り方など、日常生活の会話とはまた違った、深いレベルでのコミュニケーションが必要となってくるので、そんなときは、彼女達のやり方を観察し、その都度学んでいきます。

ホスピスに行って、まずとってもびっくりしたことは、環境が本当に美しいということです。病室一部屋一部屋から見える景色は緑がいっぱいで、こころが癒されます。患者さんも皆、自分たちが長くないということを知ってながらも、とても落ち着いておられ、時々笑顔も見られます。自分の生きてきた人生をまっすぐに直視されているのか、それとも何か他に理由があるのかはわかりませんが。そんな患者さんたちをみていると、とても奥深い何かを感じます。人それぞれ、”死”に対する考えは違うと思いますが、あの空間にいると“死”というものが、人間の最後にたどり着くゴールであるような、それが自然のまま受け入れられるような雰囲気を私は感じます。

日本にいた時、病棟で患者さんの死を多々看取ってきたわけですが、そのときの人の死に対するとらえ方は、ホスピスの中でのとらえ方とは全く違います。もちろん、ホスピスには、癌末期の患者さんがおられ、患者さんの希望でホスピスに入居されるので、根本的な視点は違います。でも、だったら人の死というのは、何なんだろうって感じます。病院にいるから、人はこう死んでいく。そして、この人たちはホスピスを選んだから、でもそうではなく、彼らには選ぶ機会があったからここにいるのかもしれない。そう考えると、社会や医学の進歩が作り出した人の死に対する根本的なずれを、私たち看護婦も気づかずにいるのではないかと思います。

私は、このボランティアを通していろんな面で原点に戻っている気がします。私は、まだまだ経験が少ないので、死に対する自分の考えも、また、死にゆく人の看護ということでも、きちんとした考えがありません。でも、人の死を目の前に看護するというのは、本当に深い意味があり、私たちが「一人の人として患者さんに接する」ことがホスピスでの看護の原点だと感じています。ホスピスの看護は‘HOLISTIC CARE’ですが、たった2つの単語で表わされている看護の奥の深さを感じています。

私は、日本にいたとき、病院で患者さんの死を看取る中で、いつも、なんだか報われない、複雑なものを感じていました。そのせいか、ホスピスでの看護にずっとあこがれていましたし、もちろん、今でもこの気持ちは変わりません。でも、このボランティアをやってみて思うのは、今の自分にはまだ準備ができてないということです。多分、人生経験でしょうか、、、

毎回4時間という短い時間ですが、私は以上のように、いろんなことを感じ、私なりに学んでいます。また、ボランティアとしてこんな貴重な機会をもてることに本当に感謝しています。もし、どなたかホスピスに興味のある方は、実際にこの環境を体験してみることをお勧めします。ホスピスの看護には、方法や手順はないと思います。でも、その中から、自分自身の死に対する考えや、また人が生きていくことなどを考えるきっかけにもなると思います。特に、看護婦として、普段の環境とは違った視点から死を見つめるという意味で学びが大きいと思います。

               (この記事は、「パースからこんにちは」に掲載したものです。)




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